2020年10月29日

Efficieraで、多様性を享受できる社会変化を創りたい Efficiera Product Owner インタビュー

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LeapMindは超低消費電力AIアクセラレータIP「Efficiera(エフィシエラ)」の正式提供を開始しました。Efficieraの開発を統括している Efficiera Product Ownerの脇坂にEfficieraに取り組む思いを伺いました。

聞き手:Marketing Communication Division

LeapMind株式会社 Efficiera事業本部 Efficiera Product Owner 脇坂 琢也 1983年生まれ。横浜国立大学工学部電子情報科在学中からソフトウェア技術者として活動。その後フリーランスとしてインターネットのサービスやアプリの設計・構築・開発をメインに、インタラクティブなプロジェクションなどの技術支援を行うフルスタックエンジニアとして活動。2015年にLeapMindに入社し、シニアエンジニアとしてEfficieraの開発を担当。Efficiera Product Ownerを務める。

プロジェクトにおける脇坂さんの役割を教えてください。

Efficiera Product Ownerということで製品開発のマネジメントをしてます。

Efficieraとその製品群とは何ですか?

Efficiera(IP)とEfficieraに最適化された学習済みモデル、及びモデルの学習やコンパイルを行うツールからなる製品群です。ディープラーニングを実行するためには莫大な計算コストと大量の電力が必要とされますが、様々な技術によって小さい消費電力でディープラーニングを実行できるようにしたものです。

Efficiera製品群イメージ

Efficieraのような「小さい消費電力で実行できる製品を作ろう」と思ったきっかけを教えてください。

従来ディープラーニングはGPUで実行するのが前提でした。ただGPUで実行するには大量の電力を必要とします。僕たちは電力供給など制限がある環境下でもディープラーニングを実行できるようにしたいと思いました。 エッジデバイス上でディープラーニングを実行できるようにするために、小さい消費電力で動くディープラーニングモデルを作るのはもちろん、そのディープラーニングモデルが高速で動く回路を作ろうと思い、ソフトウェアとハードウェアの両方向から開発を始めました。

ディープラーニングモデルの軽量化は一つの武器になる

脇坂さんがLeapMindでディープラーニングの軽量化に取り組むようになったきっかけも教えてください。

2015〜16年頃、ディープラーニングの開発をしている会社はまだ日本でも多くなかったと思います。ディープラーニングの開発をビジネスにすること自体が難しく、お客様を探すところからスタートし、同時にIoTのマーケットがどんどん大きくなっていくのを実感した時期でした。 様々なお客様のためにディープラーニングモデルやシステムを作っていく過程で「大量の電力やクラウドを使えないような環境下でもディープラーニングを使いたい」というお客様からの要望を数多くいただきました。LeapMindが会社として今後どのように進んでいくかを考える時にこれらの要望から「ディープラーニングモデルの軽量化は一つの武器になる」という思いに至り、そのための研究開発を開始しました。 当時様々な研究者がディープラーニングの量子化技術を研究していましたが、実用化できるかは半信半疑の人が多かったと思います。 でも僕たちは量子化による精度の低下を解決できると思い、会社として技術開発に投資しました。

個人的にも本当に社会を変えられる技術だと思っています。 ディープラーニングモデルを軽量化してリソースが限られたデバイスでも使えるようにすることは、技術の歴史に新しい流れをもたらすことになります。それは人生を賭けてやるに値することかなと思ってます。 社会を変えてきた全ての技術は、初めは使いにくく一部の環境でしか使えませんでしたが、少しずつ改善を繰り返すことで徐々に世の中に広がったと思います。同じように自分たちの技術によってディープラーニングを世の中に広げることができそうだと思ってます。 それに気づいて自分の人生を投資してきました。

脇坂さんインタビューの様子

お客様のやりたい「何か」を実現できないと意味がない

省電力・高性能・省スペースを謳ったIPを売っている会社は他にもあると思いますが他社の製品との違いを聞かせてください。

お客様はディープラーニングを使って「何か」をやりたいのであって、その「何か」を実現できないと全く意味がありません。 一般的なIPビジネスの会社はIPだけを売っていることが多いため「このIPはこのディープラーニングモデルであればこれくらいの電力、演算量、時間内で実行できます」という性能を伝えるだけです。 ただそれでは、お客様は多くの検証を自分たちで試す必要があります。長い期間を費やして開発をしてみたけど、結局製品化を諦めてしまうこともあると思います。 しかし僕たちは学習済みモデルや、容易にディープラーニングモデルを学習するためのツールをIPと一緒に提供することによって、そういったお客様の問題を解決することができます。ディープラーニングモデルと、それを高速に動かすIPとの相乗効果によって、省電力・高性能・省面積の点でも他社の何倍も優れたディープラーニングを搭載した製品ができることになります。

技術によってみんなの生活が変わって、多様性を享受できる社会にしたい

Efficieraの展望を聞かせてください。

今はまだできることは画像データを用いた物体検出に限られてますが、扱うデータの種類を音声や動画に増やし、画像でもGANを使った異常検知が出来るなど、いろいろなことができるようにしていきたいです。 そのためには技術的に乗り越えないといけない課題があるので、ひとつひとつ実験を重ねて乗り越えていきたいと思います。調査をして、仮説を立てて、これで正しいといえるまで検証を続ける、その繰り返しです。

脇坂さんインタビューの様子

Efficieraでお客様のこんなことを助けたい、こんな世界を実現したいといったビジョンがあれば聞かせてください。

今、自社で設計した半導体チップを搭載した製品を売ることができる会社は少ないです。その理由はどんどん半導体チップの製造費用が高くなっているからです。特に7nm世代のような高性能な最先端半導体製造プロセスの開発費用は高価です。 しかしEfficieraは高価な最先端半導体製造プロセスを使用しなくても実用的な性能を出せるよう、汎用的なメモリを使えるように作っています。それによってお客様のデバイス開発費を低く抑えることができます。 FPGAの場合も、既存FPGAの空き領域にEfficieraを搭載していただくことで、お客様は部品点数を変更することなくディープラーニングを製品に搭載することができます。 僕たちは簡単にお客様の製品に組込めるIPと、そこで動く複雑なディープラーニングモデルを組み合わせて提供しています。 これらの技術によってお客様がディープラーニングを搭載した製品を作ることを手助けしていきたいと思っています。 個人的にはディープラーニングを使った製品が広く活用されることでエンドユーザーの生活が変わっていき、皆が多様性を享受するような社会にしたいと思ってます。

LeapMindはAIを色んな人に使えるようにしようと努力していて、それはすごく人類のためになる

例えば新卒の人や親しい人にLeapMindを説明する時はどのように話してますか?

AI、しかも特殊なことをやっていると話してます。 特殊なこととは何かと言うと「あらゆる人がAIを使えるようにしようとしていて、それは人類のためになることである」と話してます。 自分の子供にもディープラーニングの仕事をやってると話しています。 子供から自動ドアとか「これはディープラーニングを使ってるんか? 」などと聞かれますね。ディープラーニングを使ったプロダクトを子供と一緒に考えたりしてます。

インタビューを終えた脇坂さんの様子