2020年8月25日

食肉処理ロボット×ディープラーニングで実現する高精度自動除骨処理【株式会社 前川製作所】

トピックス

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株式会社 前川製作所(以下、前川製作所)は大型の産業用冷凍機などで世界トップシェアを誇る熱の総合エンジニアリングメーカーで、近年は産業ロボットの開発にも注力しています。LeapMindは前川製作所と共同で食肉自動処理ロボットへ導入するディープラーニング技術を開発しています。

前川製作所の食肉処理ロボット

前川製作所は豚肉生産における骨の除去をより簡単に、効率よく行うための豚除骨自動化システムを開発・販売しています。除骨自動化システム構成の中には、大腿骨・下腿骨を除去するロボットが含まれており、装置内で撮影した豚もも肉の画像を元に算出した骨の位置データを手がかりにしてナイフのついたアームで肉に切れ込みを入れ、大腿骨・下腿骨を引き抜きぬく作業を行っています。

このロボットは1時間に500個もの高速な豚もも肉の加工処理が可能で、日本国内の豚もも肉の全消費量を数十台でまかなえるほどの能力を有しています。

現在、前川製作所では、現行の食肉加工ロボットの画像認識の機構を刷新し、寛骨と呼ばれる腰骨の除去能力を新たに備えた新型機種を開発中です。

食肉加工ロボットの画像

LeapMindと前川製作所の取り組み ディープラーニングでカット位置のずれを低減

LeapMindと前川製作所は、開発中の新型機種に搭載される予定の、ディープラーニングを使ったカット位置の割り出し機能の共同開発プロジェクトに取り組んでいます。

食肉加工ロボットがカットをしているところ

このプロジェクトで採用したのはセマンティック・セグメンテーションと呼ばれるディープラーニングアルゴリズムで、画像に何が映っているのかをピクセルごとに推定し、物体の領域を事前に設定したカテゴリに分類して塗り分けることができる技術です。3次元スキャナから取得した肉の点群データとRGBカメラで撮影されたRGB画像データとを合わせたRGBDデータにこのセマンティック・セグメンテーションの処理を施し、部位や骨の位置をピクセルごとに推定しています。推定結果を元に肉の個体ごとに異なる最適なカット位置を割り出します。

セマンティック・セグメンテーションを用いたカット作業の説明

今回の取り組みでは、実用レベルの高精度推定が可能なディープラーニングモデルの構築に成功しており、従来の処理ロボットで採用していた画像認識技術では約10%の確率で起こっていたカット位置の10mm以上のずれを低減できました。

現在は工場内での実証実験を通してさらなる精度の向上と安定化のためにディープラーニングモデルの改善を行っています。