2月某日、都内で行われたイベント「dots. Conference『人工知能のつくる未来』」にて国内の人工知能に関するトップランナーたちが集い、パネルディスカッションが開かれた。
パネラーは、先日「Watson」日本語版を発表した日本IBMの樋口正也氏、LeapMind CEOの松田総一氏、そして自動運転「ロボットタクシー」の実現を目指すZMPの三原 寛司氏の計3人。モデレーターに、Archetypeの福井俊平氏を迎え、人工知能の未来について熱い議論が交わされた。今回はディスカッションの中でも特に興味深かった点をいくつかご紹介する。
・自動運転におけるディープラーニング
まず、ディープラーニング技術を活用し「ロボットタクシー」の実現を目指すZMPの三原氏が語ったのは、自動運転技術とディープラーニングの相性についてだ。現在、自動車業界においてディープラーニングは注目を集めているという。
今年の1月のCESでは、TOYOTAが人工知能の研究所をシリコンバレーに設立することを発表したことなどもあり、自動車業界のディープラーニングへの関心は益々強まりそうだ。しかし三原氏は、自動運転へ活用する際の問題点について次のようにいう。
「自動運転のエンジニアの皆さんと話していると『果たしてディープラーニングは実用化するのかな?』という声も聞こえてきます。なぜかというと、ディープラーニングは複雑なニューラルネットワークを介しているので、認識を間違えたときに、なぜ間違えたのかという解析が非常に難しい。自動車で人を引いてはいけない、ぶつかってはいけない。ぶつかった時に何故ぶつかったかを報告しなければいけないのです。何かソリューションはないかなと、我々やっていて思います」三原氏
・ディープラーニングは一部機能の代替である
課題はあるものの、自動運転だけに収まらず、様々な分野でディープラーニングの需要は高まっている。いまや人工知能やディープラーニングといったものは「何でもできる魔法のようなもの」と思われがちだ。しかし、本カンファレンスで度々スピーカーから出ていたのは「得意領域があり、できないこともある」という声だった。
LeapMind CEOの松田氏もディープラーニングはあくまで一部機能の代替だと強調する。
「ディープラーニングというのは、使うシーンや目的をしっかり明確に設計しないと結果がでません。大企業とのミーティング(LeapMindは多数の大企業とディープラーニングに関わる研究・開発を行っている)では『何がしたいのか?』を一番最初に話します。UXのところを明確にしないと、我々は受注しないようにしています。そこのデザイン設計がシステムを作るときに一番大事だと思います」松田氏
・自然言語処理は実は日本の十八番?
人工知能やディープラーニングには使う目的が明確である方がいい。IBMの人工知能Watsonでさえ自然言語処理が得意だという特徴がある。先月、日本版が発表されたWatson。そんなWatsonに関する興味深い話をIBMの樋口氏が語ってくれた。
「Watsonはアメリカから来たので日本語の処理はどうなの?とよく言われますが、実は日本が世界にさきがけて日本語の自然言語処理を開発し、それを世界に輸出したのです」樋口氏
IBMは、神奈川県にある日本IBM大和事業所(2012年に閉鎖)で30年ほど前から、日本語の自然言語処理の研究を蓄積してきたという。
「自信を持って言えるのは、圧倒的に日本が先行しているということです。実際にすでにメガバンクや大手保険会社でも使われています」樋口氏
日本が先行し、世界に派生していった珍しい例だ。今回のセッションで人工知能やディープラーニングについて熱い議論が交わされているのを聞くと、また日本が先行するような分野になりそうな気がした。
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